2007/02/24

そこに、父親が住んでいました

タイトルは、僕が時々公開している、句集に投稿予定のものです。

昨日、病院から呼び出しがあり、
父親の、意識が戻る可能性の低いことが告げられました。

人間関係や人格の良し悪しは別にして、
生まれてこの方、23年間、共に過ごしてきたわけですから、
昨晩は、思いっきり泣きました。
多分、今までで、一番泣いたと思います。

前回の投稿にもあるように、
胆管癌で、大きな血管のすぐ近くに腫瘍ができ、
切除するには、命の危険が伴うために、
結局、今日に至るまで、癌は大きく肥大してきました。

癌の肥大は、だいぶ進行していて、
腸は既に、機能できなくなるまで、肥大しているそうです。
これが原因で、しゃっくりが止まらなくなり、
前回の投稿にあったように、胃から先に進まなくなった、
排斥物が、逆流してきている原因だそうです。

また、昨日は、まだ意識があったのに、急になくなってきたのは、
腎臓(だったと思います)に転移したため、
脳障害を引き起こすようになったということです。

2週間ほど前から、モルヒネなどによる鎮痛剤の投与をしていて、
この2,3日は、投与のし過ぎによる副作用をとめるため、していなかったそうですが、
モルヒネも、意識を失っている原因と考えられるとの事でした。

しかし、まだ、完全に意識を失ったわけではありません。

大きな声で、問いかけをすると、「はい」とだけ、返事をします。
目が、こちらを追いかけてきます。

絶えず続く、胃の堆積物によるしゃっくりの間に、
時折、意識が戻り、目線が、こちらを向いたり、
トイレに行こうとして、上半身を起こそうとしたりして、体を上げようとしたり、
寝返りをうったり、
こちらの問いかけに、答えるようになったりする状態です。

先生の話では、
現在は、心臓や肺など、転移していない所は、元気ですが、
他の臓器の疾患に引っ張られるようにして、
一気に悪くなる可能性があるということ、

また、意識は、戻ったりなくなったりを繰り返して、
今週中には、返事すらできなくなるようになるとの事。

いまは、坂を、徐々に転がり始めている所で、
いつ、加速を始めるかわからない状態であること

と、伺いました。

実は本人は、言葉の上では、自分が瀕死であったことは、
気付いていませんでした。

先週の日曜に、一時帰宅したのですが、
その時も、自分が買うマンションの書類を整理したりしていて、
むしろ、後数年間は生きてゆく気持ちは、持っていたようです。

看護婦さんが、昨晩、父親が、
病院の向かいにある、とある有名な公園に出かけ、
桜を見に行こうとしていたと話してくれました。

母親は、自分がどこで何をしているのかすら、
わからなくなってるんじゃないかと、いっていました。

よくわかりませんが、
闇の中、舞い散る桜の中にたたずむ、弱った父を想像すると、
ただ涙があふれるばかりです。

そこかしこをみると、父親の残像が残っており、

そこに、父親が住んでいました
そこで、父親が生きていました

という、喪失感までは行かないものの、
もう二度と、繰り返されることのない日常が、
この家には、溢れ、その影を踏まずにはおれません。